テンオアラの嫁/リンネ
いる。
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そしてわたしはどこかの研究所の中、部屋から部屋へと移動を続けている。自分が奥へ進むのをやめるまで部屋は連なっていくのだろうという予感がなんとなく感じられる。ふいに、そろそろ解剖室に行き着くのではないかということをおそれ始め、わたしは震えながら来た道を引き返していく。背後から自転車に乗った女性が現われて、ぐんぐんと近づいてくる。そのままわたしを追い抜いた。後部の補助席にはなんとも可愛らしい幼児が座っているが、死後しばらくたっているため、石のように固くなって動かない。自転車があまり揺れるので、子供は上下に震動して、補助席から少しずつずり落ちている。母親はますます速度を上げて走っ
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