テンオアラの嫁/リンネ
学生たちに紙を配っている。一枚は白紙で、もう一枚には白黒で花の写真が載っている。「ここに花を描きなさい」と先生がおっしゃった。蓮の花に似た大柄な花ではあったが、見たことのないものだ。早速描き始めるのであるが、どうも写真の印刷が悪く、花の細部を捉えることができない。前の席の方に本物の花を用意しているとのことだったので、席を立って見に行くが、すでに先生と近くにいた学生たちがその花を食べてしまったのだろう、蓮の花托に似た芯の部分が、まるで食べ終わったとうもろこしのそれのようにごろりと転がっていた。先生の口の周りは透明な汁でびしょりと濡れている。先生は教壇の向こうに座って、教室全体を厳粛に監督なさっている
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)