空樹/木屋 亞万
空を自由に飛べる鳥をうらやましさで見つめる
羽ばたいても人の腕はむなしく空を切るだけ
風をつかめる羽根がこの手にもあったなら
自転車を両手放しで疾走する、コートの袖ははためいている
天を仰いで目を閉じたとき自転車が街路樹に激突した
手の平と膝を擦りむいて
傷の痛みではなく、惨めさで涙が滲んだ
息が浅くなり始め、耳が熱くなってきた
もうだめだと脱力したときに、声が出た
我慢せずに泣いたら、こんな声が出るのかと思った
街路樹が並ぶ車道
ライトをつけた車の列と、家路を急ぐ人の足
下を向いて泣いて、息を吸うときだけ顔を空に向ける
涙で街灯の光が放射状の線を描き滲む
不思
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