なんという幸運/木屋 亞万
封筒に花をつめて贈る
もう届くはずのない海の底
砂とコンクリートで満たされた場所で
白骨化した魚類たちと眠っている
赤いポストに届けたい
気取るつもりはないけれど
想いを物に変えて何かを贈りたい
浜風に乗って海面を流れていくのではいけない
贈るなら心臓に埋め込むくらいでないと
花を摘むとき指先は
物質でないくらいのやさしさで
包み込むべきなのだろう
風のようにさりげなく花びらを散らし
ひとつ残らず封筒で受け止めていく
樹木の柔らかな爪先で袋を満たす
口付けでもないのにチュンチュンと
飛び回りながら鳴いている野鳥の唇に
ごそりと花びらを奪われた
愛する
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