なんという幸運/木屋 亞万
する鳥でもおるのかと尋ねたならば
そうではないと言う
中毒ではないのだが
温もりが不足していて
声を欲しているのだ
できれば天使に似た声で
柔らかい耳ざわりのものを
空気を突っつくように小鳥は続ける
密室で風は起きない
水槽に波は立たない
一人では寝られない
花無しでは死ぬこともままならない
死にたての花びらで
私の棺を満たしてください
ひとしきり想いを告げた鳥の子は
赤いポストの腹の中へ旅立っていった
あらかじめ僕はそのことを知っていたので
封筒に花を詰めていたというのに
とんだ早とちりだな君は
そう思いながら僕は
風のようにやさしく
息を吐こうとして
誤って涙をこぼした
なんという幸運と
海底から
一粒の
泡
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