雨の後/ズー
男の声が聞こえてくる
足首を切り落とした男の声だ。わたしの耳を握っていた。
「側まで寄るが、触れることはねぇなー」
喉元がいやらしい。
「お前は見たことが無かったのか」
口元がいやらしい。
「はじめましてでも無かったよな」
吐く息がいやらしい。
わたしの耳をいじくりながら、切り落とした足首から先を押し付けてくる。
いやらしい男だ。
きっと、足首から先は男の中で、もっとも、いやらしい部分なんだ。切り落とす事が、もっとも、いやらしい行為なんだ。腐臭を散らす、果実のように、もっとも、いやらしい味なんだ。
わたしには解っていた。
この男はわたしを愛している。そ
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