雨の後/ズー
。それを知らずにいる。知らずにいるから、こんなにも、いやらしく、生きていられる。
わたしには解っている。
押し付けられた。
足首から先はわたしの腕の中で眠りについた。
まるで、
「赤ん坊のようだな」
いやらしい声で男が言う。腕の中の赤ん坊?
赤ん坊がわたしの
赤ちゃん、だとしたら
目覚める事があるのだろうか、目覚めたら動くのだろうか、動くのなら何か食べるのだろうか、お腹が空いたと泣くのだろうか、泣いた後は笑うのだろうか、
それから、後には、
笑った後には、
何を求めるのだろうか。
男がわたしの目の前を塞いでいて、手には、わたしの耳を握っていた。
わたしに触れず
わたしを押し潰すような
雨が、降ってきた後に
残されたものは
わたしだけだった。
腕の中でわたしの耳が
蝸牛のように
油を売っている。
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