烏賊は少女じゃない/ayano
見えないであろう目に、俺はそっと舌を這わせた。引きちぎったそれをガムのように、ここから先ずっと噛んでいることをここに一応示しておく。
しばらくして。時間が経っても欲情し続けていた俺は、欲望のまま烏賊に自身を宛がった。さすがに躊躇した。死んだ人間ならまだしも、烏賊と性行為をしてしまう自分はもう普通じゃないんだと、ほんの理性が保てていたから。意識が――たとえば死んだ魚のように、海に急浮上するように――空気を吐き出して。そうやって烏賊に挿入したときの心持ちは晴れ晴れとしていた。陽に照らされているのに、枯れることのない曖昧さも携えたような。自分のわずかな息遣いしか聞こえない状態で、うわの空だ
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