烏賊は少女じゃない/ayano
 
空だった。気付いたときには思い切り精液を中に出していた。死んだ少女とセックスしているのと何が違う。何もかも違う。違わない。ただ、永遠に孕まない。



出してから一息ついたところ、理性が戻ったところで俺は彼女の異変にやっと気づいた。から黒い液体をこぼしていた。すうすうと黒い液体を出していた。イカは自分の身を守るために墨を出すのだと、幼少期に図鑑で見た覚えがある。俺は敵じゃないよと言い聞かせるように黒くなってしまった唇を撫でた。精液を注いだ分だけ墨が吐き出されているようで嬉しくなった。彼女の体の容量は限られていて、その容器の中に少しだけでも俺の痕跡があるのなら。俺は彼女の白い体を抱えて、キスをした。ふたりで黒い唇になった。唇は眠りにつかないから、きっとこの黒は消えてしまうから。どうせ俺はコイツをどうにかして処分するから。そのままこの子の隣で倒れこむように眠りについた。


その眠りの中で、キスを幾度も重ね彼女を足先から食べる夢を見た。
胸がしめつけられたのは、彼女の綺麗な足だと信じようとしている。



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