アジャセのしるし/殿岡秀秋
 
ものごごろついたときから、ぼくは将来坊主になるのだと母からいわれた。お腹のなかにいるときに決めたのだから、運命なのだ、と母はいいはった。
子どものぼくは母についてお寺にいった。そこには大勢の人がいて、子どものぼくを歓迎してくれた。ぼくは何もわからずに拝んでいた。寺へ行くことはいやではなかった。しかし、坊主になるのはいやだった。
自分の未来が決まっているのがいやだったのだ。ぼくは坊主にならないですむ方法を考えた。子どもの今、坊主になりたくないといっても、必ずなる、お腹のなかにいるときにきめたのだからと母にいわれてしまう。そんなとき母の目の色がすこしかがやきをましていた。
とにかく、その話題を遠
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