人間ではないアイロン/真島正人
 
らだ

ひしゃげられ、
熱に焼かれ
かたちをかえることは、
変容ではなかった
それを
アイロンは、
彼独自の
知性で知っていた
鉄の持つ性質が、
水素・炭素と結びつき
電気を解さない
知性を彼に与えていた
万物の
不思議は
遠く遠く
向こう側の世界にあった
薄いベール一枚を隔てて
向こう側にいる
『人間の知性』を
眺め続けた

やがて、
小さな死がやってきて
いくつかの
交換と行き来があった
そんな当たり前の出来事の
連続が
フィルムのように
カタコトと流れ
知らなかった光が
幾度か頭上で
きらめいた
Xと書かれた文字が
黒板を
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