指先で語られる人生悲話/涙(ルイ)
金のことしか興味がない母親のこと
何度メールしても返事もよこさない友達のことや
もうずっと昔に去っていってしまった人のこと
私を忘れていったたくさんの人たちのことや
私が忘れていったたくさんの人たちのこと
それに 重たい言葉ばかり吐き出してしまう
この出来損ないの詩人の指先のことも
忙しく働いているときだけは思い出さなくてもいいんだもの
おかげで最近の私はとても健康的なのよ
健康的な そう健康的なはずなのに
一日の終わり
街灯の合間を縫うように身を縮めて歩いていると
とたんに顔を出す不安定な自分
いつもいつも 死にたいなんて考えてるわけじゃないのよ
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