残照 / ****'98 '01改編/小野 一縷
 
架線上を滑る 雲の流れと同じ速さで
ずっと持ち合わせて 色褪せた 自分らしさを 
一つずつ 塗り潰し 捨ててゆく

ぼくの死肉を求めてか
鳥が一羽一羽 輪になって
雲を素早く 掻き回す


自我よ 焦るな 恐れるな


素早い雲の回転 時計の針を追い抜く
筋力が 体力が 心の強さが それらの形が 失われてゆく 
意志が 意思が 意識が こぼれてゆく
その隙間に 流れ込む 喪失という 代替えの快楽

これは
充足感か?
あいつらの蔑み その表情が
きみの繊細さ その指の震えが
君が別れを告げた時の 悲しい笑顔が
確かに ここに 現れて また 消えてゆく
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