降り立つ / ****'03/小野 一縷
の 秒針の鋭利だ
ほら
尻尾を振って
舌を振って 紅い唾液 垂らして
親指を引っぱって 爪を裂け
骨筋張った 右手で
ホクロだらけの左腕を掻きむしって
重く黒く硬く 両眼をブチ開け
見ろよ
白髪の若いあいつが見てる
月すら 甘い 今夜
渇ききった路面に吹く
スカスカの風の中のツブツブは
鏡に 微細な モザイクを 描き出す
朝焼けすら熟んだ今朝 降る雪は 血の霧だ
黒蝶のように 柔らかく舞い上がって
鱗粉だけを きらきらさせて
明日への ありきたりな つまらない 希望すら
瑞々しくさせて ほら あいつが
爪はちゃんと切れ
黴菌
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