コメディ / ****'04/小野 一縷
 
砕いてゆく


並木道を一陣 切ってゆく木枯しが
暑い季節の残り火の 落葉を炎と巻き上げる


湖面を裂いて銀色の水鳥が一羽 滑るように飛翔を開始する
季節の終りと始まり その飛翔と行き違う 雪雲


アイトーンが 季節風を尾と引いて
ずっと遠く 大きな暗闇の円上を
歌のような歩調で 無言で 主を運んでゆく舞踏


素早いざわめきが 石造りの十字路を抜けて
一つの鐘の 音の奥へと 突き抜けてゆく 
幾千の 響きの矢になって 次々と


鮮血に濡れた肉に餓える 灰黒色の魔犬が一頭 
視界に注ぐ雨粒全てを 眼光の銀で掃射する


暗く透明な水 滴る夜に
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