巣/リンネ
ぶりに高揚した鼓動に、半ば新鮮な快感が沸いてくる。
私は男を怒鳴り散らしてやろうとばかりに、勢い任せでドアを開いた。
しかし、この家の主人だろうか、向こうの部屋から出てきた男が、顔を歪ませてこちらを睨みつけている。何か言いたいのか、口をもごもごとタコのように滑らかに動かしているが、声がまるで出ていない。真っ赤に高潮した顔を見ていると、こちらまで情けない気持ちになってくる。だが、その男の持つある種の異物感が、この家にフィルターをかけ、家は余計に静かになったような気がした。まるで母親の体中のようにゆっくりとしていて、耳元の血管を流れる血液の音すら聞こえ始めてきた。
髪の長い女が台所で何
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)