巣/リンネ
 
で何かを作っている。尋ねれば、バナナケーキだということだった。甘ったるい匂いが部屋に充満している。家は完全に閉め切られているようだった。もしかすると、匂いをできるだけ満喫しようという意図でもあるのかもしれない。あるいは家に入ったものを逃さないためか。
 いつの間にか日は落ちかかって、西日が部屋に差し込んでいた。
 気がつけば、女の顔に生えた産毛が日の光を受けてきらきらと光っている。女の視線は落ち着きなく私の足元を見ていた。下を見ると、私は靴を履いたまま上がりこんでいるらしかった。申し訳ない気がし、すぐに脱いで謝った。女は非難する様子をまるで見せず、いいんですよと私を許し、バナナケーキを勧めてき
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