蠅車掌/(罧原堤)
 
発砲して窓ガラスをくだけ割らせると、ガラス片をゴム長靴でふみにじりながら、マンションのベランダで洗濯物を干している主婦などに標準をあわせて引き金を引く。スコープ越しに見えるマンションに住む奴らのしだいにひきつる顔々。
 このハエは昔、この電車の第6頭部の車掌として働いていた。いそがしい日々だった。
「何かごようのやからは乗ってはおらんか?」と、連結箇所まで腰をふりながらねり歩いていっては、運転シートに戻り、でっぷり太ったケツを何度も何度も座席におしつけ、座りごこちを良くしてから、火炎放射をしがない木造アパートにくらわせ、一瞬にして全焼させる。アパートの二階の窓から燃えさかる奴らが2、3、飛びお
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