温泉街/捨て彦
背中からはデーモンに受けた最初の一撃が、思いのほか致命傷だったようで出血が止まらない。なんてこッたいと涙を薄汚れた服の袖でなぶりながら、不図目に留まったのは小さな土産物屋。しかし通常ならば、生き死にの掛かっている現在である。土産物屋など目に入る分けがない。さすればなぜそんな俗物的な物に心奪われたかというと、何も誰かに土産を買おうなどと思ったわけではなく、そこに学生が大挙していたからである。どうやら中学生の修学旅行のようだった。その風景を見ておれは死に物狂いでその群れに駆け寄った。それはほとんど本能ともいうべき行動だった。
案の定居た。ウォーターマンのトミーだ。奴は中学校の英語教師をしている。おれ
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