温泉街/捨て彦
えていたからだ。
攻撃があった次の日は休戦する。いつからか、デーモンの攻撃が始まったその頃からこのサイクルは定まっていた。つまりそれはデーモンとおれたち人間との暗黙のルールだった。おれを狙った次の日には、おれに対する攻撃はしない。別の連中を標的にする。今までそういった弱々しくではあるがルールというものが人間とモンスターとの間に出来たとき、それに順応するようにおれの生活スタイルは完成していたのだ。
にもかかわらず、今回デーモンは連チャンでおれにその牙を向いた。丁度おれが、名湯百選に選ばれている地方の温泉宿で足湯に漬かっているときだった。おれがアスファルトジャングルの喧騒をすっかり忘れて夢見心地で
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