うでげ/捨て彦
「おお。そうなんか。そりゃすまんな」
「馬鹿たれがっ」
馬鹿たれが。爪楊枝で馬鹿たれ、と作ろうと思ったけど、数が足りなさそうなのでやめた。周りには人が馬鹿ほどいる。狭い部屋にぎゅうぎゅうと詰まって、今にもはちきれそう。大体季節が悪いと思う。こんなにムシ暑いんだから半袖着るのは当たり前だし、酔っていると、よその人の腕毛が嫌でも目に入る。イライラする。
なんだお前らのそのイィーっとする腕はよう。あー。腹が立ってきた。腹が立った上に更に腹が立ってきた。勢いで六杯目のビールを飲み干した。頭がぐわんぐわんする。うー。もう一杯じゃ。バカタレが。もう帰るか。何時間待つんだ俺は。
「おっさん」
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