うつくしい海岸と怪獣/水町綜助
 
ようにこの大怪獣を述懐するだろう
やはりその鳴き声はこの夢想のくだらなさを置き去りにして
耳を覆うほどの恐怖の絶叫に成り代わるのだろうか
いや怪獣の到来を知らない子どもたちにとっては
かつて半笑いで踏まれたやつらよろしく
どこか珍奇なものとして受け入れられるだろう
「言うこと聞かないと、『にゃごろーっ』が来るよ!」
などと親御さんが叱ったとしても
このたとえば僕がいま寝そべる静岡のーどこだかわからないが灯台のあるー海岸線にすむ人々以外は
だってここにはまだやつがうずくまり
黒々とごつごつした濃い影のような背中を丸め眠っているのだから

そんな街の人々のことを思いながら

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