うつくしい海岸と怪獣/水町綜助
だ均衡しない水の冷たさ
波打ち際を歩くしかなくて
体は白い
白人だった
僕は
黒いジャケットを白い海岸に敷いて
仰向けに眠る
海水をぐっしょりと吸い込んだジーンズをはいた足を投げ出して
隙間の多い体の中には
わかめを拾いにきた蟻が何匹も這い込んでいる
目を閉じると
視界は血の赤を下地に塗り込んだ明るい暗黒で
その目玉の裏側で六本の足を持った働き蟻が右往左往している
瞼の天蓋の
さらに上には天井、
何本もの白く光る紗をひいた空があり
繊維を逆さに湿らせていく波はドレープ
芝だか蓼だか知らないが、クサがまばらに風紋をふちどり
空に波が打ち寄せている
丸い球
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