薄く、淡く、確かに。/灯兎
感情を揺らすことだってできないんだって」
「僕だって君に感情を揺さぶられることはあったよ。ただ君が見ていなかっただけさ」
「それだけじゃないの。あなたいると自分がだめになっていくように思える。いつまでも満開の桜の下には、どんな鳥も寄りつかないわ」
その比喩の指すところと、彼女の真意を図ろうとしたが、僕にはできなかった。どうしてかはわからないけれど、そんなことに意味なんてないと思ったからかもしれない。いずれにせよ、僕らはもう終わりだ。
「僕にも異存はない。いいだろう。僕らは別れるべきところまで来た。ただ二つだけお願いがある。これでもう何の関わりもない他人どうしだ。明日からは話すことも
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