薄く、淡く、確かに。/灯兎
 
が鎮まると、桜の呼吸さえ聞こえてきそうな気分になる。ひとつ息をつくたびに花弁をひとつ散らせ、ひとつ息を吸うたびによそから色を奪ってきてしまうのだ。そうでもなければ、あれほど綺麗に咲き誇ることなんてできやしない。

 「ねえ、別れてくれない?」
 その問いが発せられるのが、充分に予見できたことだった。だから自分が少なからず衝撃を受けているのが意外だった。でも、僕に残された道は多くない。
 「最後にそう決めた理由だけを教えてくれないかな」
 「あなたは優しすぎるの。私がわがままを言っても、ひどい言葉をかけても、いっつも笑ってるんだもの。そういうのって、とても疲れるの。ああ、自分はこの人の感情
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