写真のこと/「Y」
 

「外界の対象を記録する」のと「自身の知覚を記録する」ことの違いというのは、表面上には現れてこない。「念写写真」などというものを写せる人は、普通はいないわけだし。
 しかし、写真に向かう姿勢が、全く異なるものになってくるのではないか。
 私自身の実感を言えば、写真に写っているものは、単に現実世界を写し取ったものではない、というものだ。撮影者の表現行為が具現化したものかといえば、そうした面もあるけれど、それがすべてではない。印画紙に写りこんでいるものは、「写真的世界」であるとしか、言いようがないような気がする。
 
 昨年の、6月頃のことである。
 当時私は、通勤途中の車の中から写真を撮る
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