写真のこと/「Y」
 
撮ることを日課にしていた。
その日はたまたま到着が早すぎたために、職場の近くにある駅の周辺に車を走らせながら、視界に入るものを撮っていた。
 繁華街で、飲食店やホテルも多い場所である。なにか面白い風景は無いかと、四方に視線を走らせながらバス通りを走らせていた。と、ある一匹の犬が、視界に飛び込んできた。
 歩くのもおぼつかないほどの幼犬である。路地裏で母犬に護られているところを、何かのはずみで往来によろめき出たような、そんな感じだった。
 反射的に数枚撮った後、
 「こいつは危ないな」
 と思う。
 抱き上げて、路地に戻してやれれば、ともチラリと考えた。
 バックミラーに目をやると、
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