写真のこと/「Y」
 
り囲んでいる――そんな映像である。
 一見したところ、普通のモノクロ写真と、何ら変わるところのない、ありふれた写真である。
 だが、つぶさに観察すると、周囲を取り囲む建物や、塔の細部が、この世のどこにも存在しないものであることが分かるのである。
 近頃、自身の街での撮影行為に関して思うときに脳裏をよぎるのが、この怪しい念写写真の映像である。
 対象を内面に置いているものと外界に置いているものの違いはあれ、写真としての在りようは同じであって、むしろ、どうかすると、怪しげな念写写真の方が、より、写真というものの核心に迫っているような気さえするのである。
 普通、「良い写真」というと、どんなも
[次のページ]
戻る   Point(3)