ぼくのだいすきなキリン/蠍星
すきな歌だった
あるときは恋であったし
あるときは別れであった
ぼくのだいすきなキリンの頸の長さは
ぼくがおとなになる為の時間
そのものだった)
ある日キリンは立ち止まった
キリンは言った
「きみはひとりでおゆきよ
ここに陸がある」
見ればたしかにそこに陸がある
けれどこんなに太陽がちかくては
あのまっしろな砂でやけどをするだろう
だってぼくの足のうらは
なみだで潤けてしまっているから
「きみはひとりでおゆきよ
ここに陸がある」
キリンの声をききながら
ぼくはキリンのひとみがもう透明でないことを知った
キリンの長いまつげがかくしていたのは
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