ぼくのだいすきなキリン/蠍星
がとどいた
電信柱のてっぺんにもなみだがとどいた
小学校の屋上にもなみだがとどいた
キリンの頸は
もうこの街のどんな建物よりも高く
たくましくなっていた
キリンのひづめはもう遠くて見えない
ぼくの部屋もじめんも
もう遠くて見えない
ぼくのだいすきなキリンは
街が海に変ってひさしい
キリンは孤独な海をのんびりすすんだ
ぼくはキリンの頸すじにすがって
かなしくて泣いた
みなもに銀色のうずまきがほろほろと広がった
無辺のなみだにキリンのあたまが
空をこすりながらすすんだ
(ぼくのだいすきなキリンは
あるときはだいすきな絵本だったし
あるときはだいすき
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