十六歳/薬指
 
うなら
自分の足で歩くのを止めて
大きくて強い生き物の手足になればいいのだし
そうでなければ
一日に煙草の箱を三つずつ空にして隅田川を眺めながら
何か特別なものが流れてくるかなんて
ずっと待っていても誰も何も失わないでしょう?


近所の自販機に千円札を食わせて煙草を三箱手に入れ
全て吸い尽くすまで
ずっと空に浮遊する雲の形を視線の先でなぞっていた
十六歳になったばかりの俺の肺袋は黒かびのような
無数の斑点で埋め尽くされていただろう
そのことを彼女に言うと
いつも隣に腰をおろして
何も恐れることは無いというふうに
自分も一本吸って見せた


あと半年ほどで卒
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