十六歳/薬指
で卒業してしまう年上の彼女は
周囲の空気が屈折して虹が浮かびそうなほどに綺麗で
そして同じくらいに危うかった
黒く長い髪が肩に垂れて風に気持ちよく流され
二人の煙草の煙が混ざり合って
空に溶けてゆく様子を見ていると
心のどこかが満たされるのと一緒に
また別のどこかが痛む気がした
俺には何かが必要で
彼女には何一つ必要無かった
未来は固く閉ざされたままで
どこかに行きたいと願っても
結局どこにも行けずにいた
絶望とは少し違う
投げやりな倦怠感の中で
飼われるように生きていた
十六歳
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