流れ者/ゆえづ
 
き答えは出てこない
「俺は」
ロッカーの鍵と登録証
俺を証明するものは今のところこれだけだ
「N19-0472だ」
ピピ
タイミング良くメールが届く
受信フォルダを開くのをためらった
『N19-0472さんへハッピーなお知らせです!!』
こんな残念なメールに違いない
これ以上追いやるな


誰かさんよ
俺は希望すら落っことしたらしい
忘れたんじゃない
傘は必要なかった

愛も


踏切から身を乗り出すと
痩けた頬を風がびたりと打ち
脳天を轟音が突き抜けた
あと十センチ
あと少しの勇気があれば
この砂利上に散れただろうに
あとわずかの愛を失えば
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