箏曲:ダニの半透明のボディーを通して見た家賃7万2千円 西日暮里編/salco
アタシは救命ボートを洗わないじゃないか、あんたが乗ってから
洗剤と漂白剤は絆をだめにするんだよ、おまじないを消しちゃうからね
そしたらあんたが帰って来られなくなるだろ? アタシは誰を待てばいいの?
何のために売ればいいのさ、他の男達なんか全然良くないのに
それもそうだな。見飽きた天井の木目を仰ぎながらオレは考える
大穴さえ出せばいつでも出て行けるんだ、雨ばかり続いている
今は時機じゃない、すえた部屋でテレビは退屈でも靴は濡れなくて済むしな
確かにこの女は救命ボートに違いない、道端で拾ったダイアモンドに違いない
考えごともいいけどほら見てごらん、あんたの指が立派だよ、とねえちゃん
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)