ペイター「ルネサンス」(1)/藤原 実
 
とめているだけのこと、------言わば、織物の模様
    で、実際の糸そのものは、模様を超えて外に及んでいる。少くともこういう焔の
    ような性格を、われわれの生命はもっている。つまり生命とは、一瞬ごとに新た
    なる力の共同作用で、その力は、遅かれ早かれ、別れて別の方向に進んでしまう」
                            (『ルネサンス』「結論」)


ペイターは「言葉によって堅固な実質を与えられている事物の世界」に対して「不安定で、
一貫せず、ちらちらと揺れうごく印象の世界」こそあるがままの世界だという。そしてこ
の印象の世界は「絶えず逃げ去る
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