魚座の裏切り者の歌 / ****'04/小野 一縷
 

今でもいつまでも
ただ一羽の 黒鳥の翼の深みへ
彼が眠る 遠く 透明に暗い 汚れた寝床に



鳥は 目覚めて間もない
揺れる白い 一粒の焔 その瞳は
まだ 高い純度で 濁ったまま


巨大な翼の影で 目蓋は闇に溶けた
蒼白く反転する 黒鳥の眼は
繰り返すストロボの発光で 見透かす 
文字が次々と 目蓋の裏に投射される 舞台装置の仕組


沈み出す夜の黒の深度 その書きかけの数値は 
まだ醒め慣れない頃の 甘苦い痛みに似た眩暈を 
言葉で彩色し 中空へと展示する
あくまでも 目蓋の裏の目次を元に
それもまた この黒い詩の仕組だ


沸騰した血に濡れ
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