魚座の裏切り者の歌 / ****'04/小野 一縷
 
濡れた叫びで 満天の暗黒の下
夜空の皮膜を一項目 熱く吹いて捲れば
硬い地面に散らばる 幾つかの言葉
決まってその中から 水銀のように弾ける言葉を掬う
(今は 幾つかの 彼が零した光の粒子 絶叫の痕跡を辿る)


鳥の 厳かで巨大な再来を 迎えて
黒く濡れたオウロラを 纏った日没が 
ゆらゆら輝き 波打っている
今夜が また始まる


びりびり 叫んでいる熱を宿した雛の心臓
小さな黒い焔の 揺らぎは
親鳥の心臓の 同調する熱にさえ 絶望の種を見つける 
生れ落ちた 暗い卵 夢の殻の中で ずっと
夜に降る 酸性の羊水の雨に 濡れながら


音楽を一度 自分を一
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