魚座の裏切り者の歌 / ****'04/小野 一縷
 
微振動
波尾を引いてゆく 空間の 輝き熱く揺らす
夜を背に
彼の声帯を 保持する為 鳥の羽音よ
もっと 強く


ここに 居てくれ ずっと
全ての 想い創る者が 己の最期を馳せる場所
言葉と色彩 造形と音符が 解れあう時 
銀に眩しい海 黒く輝く空の それらの溶け合う流域


黒海の蒸気で駆動している 夜空の液体の濃淡の揺らぎ 
その振幅を往来する 忘れられた記憶を組織する
素粒電子が散らかり
綴じかけの 目蓋のページに紛れ込む
その項目は 「彼の為の夜の詩」
それは 瞳を初めて空気に触れさせた時 
光が歌った詩 その諧調 忘れはしない
初めての耳鳴り その
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