魚座の裏切り者の歌 / ****'04/小野 一縷
見えない夜に 重ねれば 始まる
千切られた小数点の末端
その絶対零度に侵入する 眼光の
割れた それぞれの鋭角を
幾つもの言葉で 更に それぞれ研ぐ
彼へと 今 詩を書いている
曙光は夜に似た色の 苦いインクで浸した
暫く凍えることになるだろう
夜の引潮の 冷たく閃く裾の軌道上
もう一度 羽ばたけ
そう
永遠に揮発する 液体に濡れた
暗く萎んだ翼で 今夜を もう一度 呼び寄せる
鳥よ 夜の再来を 高々と鳴き告げろ
暗く硬く静粛に刺してくる その周波数の影
共振させようか
狂い始めた 一秒間 無限に刻む ここに
心臓の肉弁の震え 細胞の微振
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