魚座の裏切り者の歌 / ****'04/小野 一縷
こに残された 絶叫の響の末尾
床に壁に 深々と 沁み込んだまま 黒く凝固
魚座の左利き
最後の息吹 掻き消された痕に ようやく記した
「愛してる さようなら 繊細と衝動よ」
揮発性の高い生命の燃料を 両翼で煽げば
めりめき めりめき
割れ毀れる 世界中の黒水晶の悲鳴
その断続の間に 無感覚の上を滑る時間の破片
不等間隔で 嵌め込む 1ピースずつ
虚ろな文字 虚数に もう既に 近付き過ぎた
悲鳴の航跡を 独り ペン先で追跡 逃さない
びりびり 破れる奥深い暗幕
夜の静寂の残光線に沿って
二本の黒い眼光 それぞれの角度で
鏡の裏の 見え
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