路面電車/あ。
 

それは、まるで
帰省するときに母がいつも買う菓子折りのようで
色にも大きさにも規則性は見当たらないのに
誰かが計算して並べたような錯覚に陥る


たった二両の路面電車にも急行と普通があって
急行に乗れば終点まで停まることがない
信号待ちや渋滞でのろのろ運転になると
このまま永遠に閉じ込められてしまうのではないかと
いつまでも酸素を求めてさ迷わなければならないのかと
あるはずもないことに不安をつのらせてしまう


終わらない時間はなくて
いつの間にか扉が開いて乗客が流れる
ぐちゃぐちゃになった髪もそのままに
少しだけ急ぎ足で乗り換えの駅に向かう
深呼吸できる
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