波打ち際、ゆめは覚えてない/あぐり
 
なやかに跳ねている
銀の鱗
その鱗に刺さるようにある飛べないひれを
わたしだってもちたい
呼吸をおしえてよ
さよならをしなせてよ
ほんとうはずっとないてる
波、ないてる。

そんなにもあなた、
傍にいてくれてたのなんて
わたしは気付いてなくて
むせかえる潮の香りに
多分ずっと咳き込んでいたからあいしてなんて言えなかった
叫んでも叫んでも
この終わらない海がぜんぶをふやけさせてちぎれさせてしまうから
わたしは昨日、
新しく産まれた珊瑚の色を考えることしかしなかった
いつだって
さいごにしろくなってしまう彼等を
諦めずにあいすのが出来ない できない
爪のしろい
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