高麗青磁双耳壷の印象/楽恵
中に清朝青花壷に描かれた乱舞する青い龍を探した
地方の古陶器市や古美術展覧会に合わせて彼と逢った
セックスの後で彼はいつも、
君は高麗青磁のようにまっすぐな人だね、と言っていた
白磁ではなく青磁であることが私はいつも不満だった
私たちが別れたのは大阪の東洋陶磁美術館だった
彼はオランダ陶器のように華奢な奥様と並んで歩いていた
私に気づいた彼はさりげなく顔を背けた
悔しさ以前に
私は肝を潰して逃げた
奨学金と親の援助を受けた学生気分の抜けない24歳の私は
あの場所で始めて社会とぶつかったのだ
それから私は彼を避け送られて来る手紙は全て読まずに捨てた
院を修了して
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