回心の海/山中 烏流
 
の様子を見ていた少女の胎内に潜り込んで生まれ落ちるまで
彼には罪など、何一つなかった。





「月明かりはどこまでもを照らさない」/「もしも彼が誰かを、何かを助けたとしよう」





私は穏やかに墜落を始める。
蝋の羽は溶けてしまうのだから、当然の話だ。
そして、人々は口々に彼の、彼等の仕業だと言う。





やはり彼は独りきりだった/意識を、思考を持つ者がない場所で、彼は常に孤独だった/世界はいつか橙に染まるのだという。私にその真意が分かる筈もない/今日は鯨型の雲を見た。昨日は地平線に添う月を見た/私は進んで迫られる。そこに至る過程で、彼が関わっ
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