アラスカ5〜大自然の息吹〜/鈴木もとこ
。どちらも急ぐような緊張感はなかった。四国
ほどの大きさもあるこの大自然の中で、彼らはどこまでいくのだろうか。
バスはゴトゴトと大きくうねった道を行く。目の前に赤茶けた大地が広がる。遠くに青
白く続く山々と秋に彩られた極北のツンドラ。開けた谷の真ん中に川が自然そのままに、
いく筋にもなって大地をくねりながら静かに流れている。ムースが遠くで水を飲んでいた。
ここにある全てのものが美しく野生の輝きに満ちている。それは太古の昔から変わらず
そのままあり続けている姿なのだ。でも季節は廻り、鮭は毎年忘れずに遡上してそれが
熊の生きる糧になり、それぞれの生が綿々と繰り返されていても、川が少しず
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