アラスカ5〜大自然の息吹〜/鈴木もとこ
 
しずつ流れを
かえてゆくように、この大地でさえも全く同じ瞬間は訪れない。時間の流れは常に平等だ。
かわらずに変わりつづけるもの。その当たり前のことの不思議さに静かに打たれていた。

 バスは広く開けた展望台で止まった。このツアー最終地点のストニーヒル。
降りて伸びをする。目の前には大きくマッキンレー山がそびえていた。標高が高く自ら
雲を作るせいで、夏には姿がほとんど見えないとガイドブックに書いてあったが、今日
はスッキリ晴れ渡り雲ひとつない。その雄大な姿は頂上まで白く神々しいほどだ。イン
ディアンの言葉どおり「偉大なるもの」だ。
バス運転主から渡された温かいココアを飲みながら、まだ寒い早朝の真新しい風景に見入
っていた。
あと3時間ほど行けば、星野道夫が撮った、みごとな紅葉の中湖にたたずむムースとマッ
キンリー山の風景がそこにある。湖の近くには道夫の友達が経営しているロッジ、キャン
プ・デナリ。在りし日の道夫のことを少しだけ聞いてみたかったが、残念ながらこのバス
はここで折り返し。
気持ちを残しながらも、バスはネーチャーツアーの後半を走り出した。

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