アラスカ5〜大自然の息吹〜/鈴木もとこ
 

他は全員アメリカ人。手にはそれぞれ一眼レフやコンパクトカメラを持っている。
「こうなったらこの目でしっかり野生動物を見届けようじゃないの」と妙に鼻息も荒く
心に決めるのであった。
 バスは未舗装の道を白い土煙を上げながら走り出した。国立公園入口の看板を過ぎ少し
走ったところで急に速度が遅くなる。運転手が車内放送で何か言うと、乗客は一斉に声を
ひそめてバスの左窓に寄っていった。そこには、カリブーのオスが立派なツノを振りかざ
して立っていた。初めて見る野生のカリブーは空に向かって鼻先を上げ、丘の上で朝日の
中たたずむそのシルエットが瞑想しているようにも思えた。
乗客はそれぞれ写真を
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