祭り、花火、姉と紅い夢/結城 森士
物を着た少女の黒い髪の毛の匂いやら
ムラサキ色の口紅の
季節はずれの桜たち
あ、紅
い金魚が
口
をぱくぱくと…
人々の群れの中に
屋台の小父さんの掛け声だけが際立って
(さぁ寄ってらっしゃいいらっしゃい
(射的ー えー射的ー えらっしぇい
見渡すと皆一様に口をぱくぱくと…
ぱくぱくと…
太鼓の音が鳴る
ダンダン、ダだん。だん
―歩いていた…。私たちは、八歳になる姉を探していたのだが…。空は夜なのにまだ蒼さを残していて、私は、雲が流れていくのを眺めて立ち止まる。手を引く祖母
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