あふれる/キキ
しぶきが増殖する。先生のためのいちにちが、つかみきれなくなる。
先生。わたしはもう、いちにちを区切らない。わたしは区別する。あの水しぶきひとつひとつが別々の光を宿している。父の潜水、兄のクロール、わたしのバタフライ。わたしたちは魚ではない。理解する。
わたしたちはくるくる回った。それならわたしたちは傘だ。
しぶきがくっつきあう。プールから溢れ、兄のひとつぶをうしなう。父は海へ流される。飲み込んだ水は塩辛い。まじりあってぐちゃぐちゃになって、ホームから放った。(赤い)傘を。虹を呼ぶ。(わたしをたすけて)。かわりに朝の(狂ったような)雲が戻ってくる。蒸発しはじめたそ
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