もうひとりのぼくが囁く/殿岡秀秋
イレに向うためにまた押入れをおりる
やはり出ないので
もう終わりにしようとおもうが
まだという声は止まらない
それでまた押入れをおりる
十数度もくりかえすと
わずかに出る瞬間があった
今度こそ出きった
と喜んで押入れにもどった
まだ
という声がする
ぼくは無視しようとした
もう眠るのだ
まだ残っているよ
ぼくはじっとして
聴かないふりをする
まだあるんだよ
と声はささやき続ける
嘘だ
ぼくはもう寝るんだ
やっと最後の一滴を出したのだから
おい終ってないよ
感じてみろよ
まだ残っているよ
しつこく言われると
残っていそうな気が
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